ここでは冬が終わっていないので。
2010年1月20日、さいたま市からここ長野県諏訪市に住まいを遷してから、今までの人生の中でいちばん長い冬を経験している。
晴れた空から、突然に雪が舞い始める。つい昨日まで、野外で花が咲いているのを見ていなかったことに気付く。
首都圏暮らしでは意識が留まらなかった、家々の玄関先を飾っていたプランターが、実は四季を通じて、その色を変えながらも咲き続けていたことを初めて知る。
諏訪湖を囲む山々がその御神体だという諏訪大社の上社本宮・上社前宮・下社春宮・下社秋宮、4つの要塞に護られた結界に身を置いている気がして、どこか違和感を覚えるのは、この神が軍神であるせいかも知れない。
諏訪の空はいつも広く、湖を渡る風が町全体を洗う。夜の帳とともに刻々と鮮明になる星座と大きな月が美しすぎて哀しくなる。
そんな暮らしを始めたせいか、苦手だった春を待ち望むようになった。そして「春」という季節に託された希望や温もりが、単なる想像の道具ではなかったと実感している。
四肢を伸ばして、布団を蹴っ飛ばして眠れることを、本能の何処かで求めているらしい。
桜の開花予定が早まり、4月9日あたりになったと聞いて、肩の力が抜けてゆく自分がいる。
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