詩人会議7月号掲載 「余白」
「余白」
ここには茜の時間がありません
昼ひなかの眩しさが
翳ったあとは
夜が空から落ちてきます
明日の晴れを決め込むように
夕焼け睨み
瞼がちかりと痛む
そのひとときが懐かしく
わたしは
手首にきつくリボンを巻いて
千切れんばかりに曳きました
赤いメビウスの真ん中に
生まれたてのひらは
背中に聳えて邪魔をする、
黒い山へのささやかな反逆です
ここに茜のひとときがないのは
(郷愁 強制終了)
(ダウンロードできません)
恋うなと咎める神々の
言いつけなのかもしれません
わたしがはじまったとき
太陽と月のあいだには
いつでも
蜜柑色に熟したときがありました
遺伝子深くに記憶した
現実よりも
いたい、いたい、夕暮れです
初出:詩人会議2010年7月号
| 固定リンク
| コメント (27)
| トラックバック (0)
最近のコメント